「くりもとミレニアムシティ第一期」

「くりもとミレニアムシティ第一期」

くりもとミレニアムシティ(第一期)は、千葉県栗源町の約一万坪の有機農場に隣接した、環境共生・コミュニティの再生など、様々なテーマを持つコーポラティブ集合住宅(別荘)である。将来的には移住し、コミュニティをつくっていく予定であり、そのためのお試し別荘である。これは事前調査で、いきなり移住した場合の失敗例を避けるため、その土地の風土や近隣との関係を充分に吟味した後、良好な関係をコミュニティとして作り出す為の措置であります。都市在住者である会員が、農や各種の文化行事(コンサート・ワークショップ・セミナー等)を楽しむことを目的としている農場サロンでもあります。一般の市民の他、環境や生活スタイルに関心のある人々が集まり、市民自ら必要とする施設とは何かをワークショップを重ね、ビジョンを固めました。会員相互が得意分野を活かしながら、できることは自らが行うセルフビルド方式で建設されました。環境共生の特徴としては、伐採予定の落葉高木の森を丸ごと移植し、森と都市(建築)と農地の同時再生や、5つの機能を1つの施設にする兼用用途化により、大幅かつ効果的な省エネ、省資源を達成しています。また、全てリユース、リサイクルが可能なつくり方をしている他、汚水処理水をビオトープでさらに浄化、ペットボトルを利用した太陽熱温水器によりバスルームなどへの給湯など、機械設備に頼らない仕様となっています。COYAと呼ぶ専用部分はベッドそのものの大きさしかなく、他は共用で、専用空間をどこまで小さく出来るかの一つの解を提案していると同時に、きわめて省エネ省資源となっています。オープニング以後は野菜作りや果樹の世話の他、中庭のビオトープづくりや新たなCOYAを手作りするなど、サスティナブル社会を構築する為の実験的エコロジービレッジとしての模索を続けています。

くりもとミレニアムシティ第Ⅰ期の建築的特徴

① 都市計画の側面としての土地利用計画のパラダイムシフト

<専用ゾーニングから混成系ハイブリッド土地利用へ>

近代都市計画の考え方のひとつに専用ゾーニングがあります。地上部分を大別すると、都市と森林(自然部分)と農地(食料生産エリア)となるが、短期的な効率性から、都市と森林と農地は専用ゾーニングされ、さらに細かい用途地域に分けられました。

しかし、例えば農地は単一種栽培のプランテーションとされたため、病虫害に脆弱になり、長期的には砂漠化しやすい等持続可能性が低いことが問題となってきています。

これに対してアグロフォレストリーは、森林と農地を同時に両立させる手法として世界的に見直され始めている。森のような果樹園を想像してみて下さい。

この考え方を応用して都市と森林と農地がそれぞれ混成することで同時にそれぞれが共生関係となる持続可能調和社会モデルとしてのハイブリッド土地利用を目指しています。

また、建物と機能は従前は一対一に対応しているが、ここでは有機農場サロン、お試し別荘、セミナーハウス、芸術家村、国際交流拠点等がひとつの建物で兼用されることで施設数の大幅な削減効果と多様性の実験の場ともなっています。

② 環境建築として落葉高木とグラスハウスとCOYAの3層構成

約500坪の敷地には茨城県の造園屋さんのご厚意で伐採予定の落葉高木(欅、柳、こぶし、銀杏、山紅葉等)を森ごと移植し、その日陰になるように農業用のグラスハウスを中庭を囲むように配置しました。その中にはCOYAという一坪の面積の2階建ての高床式住居が約30棟あります。この落葉高木の森、グラスハウス、COYAの3層構成が大きなポイント。夏は葉が茂り、日差しを遮るため涼しく、逆に冬は落葉し太陽光が降り注ぐため、温室効果で日中はポカポカ。冬の夜はCOYAに入り、そこだけ局所暖房(こたつや湯タンポ)するだけの自然のリズムにあった超省エネで超ローコストの環境建築モデルです。

COYAはプライバシーを高めるため2階建とし、1階部分は会員間の交流のため縁側空間であり、高床式のデザインはアジア的なものや弥生もモチーフとなっています。

③ 究極のシェアハウスはCO2 80%以上の削減モデル

<洞爺湖サミットでの2050年のCO2のG8削減目標を既に達成している>

くりもとミレニアムシティの施設はNPO法人ミレニアムシティの多くの会員(現在約300世帯400名)の交流の場やお試し別荘として毎月行われるワークショップの会場ともなっておりそのような性質上、究極のシェアハウスが目指されています。

それは物や経済的豊かさを求め、個人間の競争を過度に求めた現代文明にどっぷり浸かった自分達を含めた現代人を対象として専用部分をどこまで少なくできるか、実際どこまで煩わしさを伴うものである共用部分を広げられるか、といった問いに対する実験の場をつくりました。 一般的には別荘を一個人や家族を前提につくると約20~30坪/軒かかるでしょう。

30軒つくったとすると約1000坪程度の面積が必要となります。しかし、ここでは約30軒のCOYAと共用部分を合わせて約200坪の床面積です。一般の場合と比べると200坪/1000坪=1/5となり80%の削減となり大幅な資源とエネルギー削減効果が期待でききます。シェア(分かち合い)の大いなる可能性がここにあります。

TV取材協力

●海外TV番組:
・「NHK・WORLD」2010年6月放送
・LES NOUVEAUX EXPLORAREURS LES CHEMINS DU POSSIBLE(フランス)


●国内ニュース番組:
・テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」2005年8月6日放送
・テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」 2006年1月20日放送
キャスター大浜平太郎さんが取材に訪れました。
・ NHK「ニュースウォッチ9」2009年6月放送


●情報番組:
・BS朝日「エコの作法」2011年11月18日・25日放送
企業家、文筆家、武道家、ゲリラ・マーケティングのマスタートレーナー等と多才なアメリカ人ウィリアム・リードさんが取材に訪れました。
・テレビ東京「7スタ・LIVE!」2013年11月11日生放送
井口浩本人がスタジオ生出演しました。
大沢逸美さんが取材に訪れました。
・他合計100回以上メディアに紹介されました。

■建物名称: くりもとミレニアムシティ第Ⅰ期
KURIMOTO MILLENNIUM CITY Ⅰ

■所在地: 千葉県香取市
Katori-shi,Chiba

■用途: 集合住宅

■設計: ㈱井口浩フィフス・ワールド・アーキテクツ
HIROSHI IGUCHI + FIFTH WORLD ARCHITECTS

■設計協力: ㈱エコライン/小野加瑞輝、
織田建築研究所/織田秀文
モリヤ建築研究所/守谷克俊
COYA設計協力者:三浦弘子
/明治大学建築学科松本勝邦研究室

詳細

■施工:青山工務店/ユタカ産業/松枝工務店/
たまがわふぁくとりー/山田ダンボール/
明治大学建築学科松本勝邦研究室(全て分離発注)

■温室:㈱大仙 関東支社

■植栽:㈱石塚造園

■設備:C&K、西商店、幸立化成工業

■空調・衛生:C&K/菅谷井戸屋

■電気:C&K

■敷地面積:1652.33㎡

■延床面積:583.68㎡(A~D棟:138.24㎡、E棟30.72㎡)